MUKYO

コラム

筆の持ち方完全ガイド|正しい持ち方で書が劇的に変わる

2026-03-17

はじめに——筆の持ち方が、すべてを決める

書道を始めるとき、多くの人が最初に気にするのは「どんな字を書くか」です。でも実は、筆の持ち方こそが書道の土台であり、あなたの書の質を決定づける最も重要な要素です。

私MUKYOも書道を本格的に学び始めた頃、持ち方ひとつで線の表情がまったく変わることに衝撃を受けました。同じ筆、同じ墨、同じ紙を使っても、持ち方が違えば生まれる線はまるで別物。逆に言えば、正しい持ち方を身につけるだけで、あなたの書は劇的に変わります。

この記事では、書道における筆の基本的な持ち方から応用まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

筆の持ち方の基本——ペンとはまったく違う

まず大前提として、筆の持ち方はペンやボールペンの持ち方とはまったく異なります。日常的にペンを使い慣れている方ほど、最初は違和感があるかもしれません。

ペンを持つとき、私たちは指先で細かくコントロールしますよね。でも書道の筆は違います。指先だけでなく、手首、腕、さらには肩や体全体を使って書きます。筆はあくまで体の延長線上にある道具であり、指先だけで操るものではないのです。

筆を持つ前に——姿勢を整える

筆の持ち方を学ぶ前に、まず姿勢を確認しましょう。

  • 背筋をまっすぐ伸ばす:猫背になると腕の動きが制限され、自由な筆運びができません
  • 肩の力を抜く:力んでいると線が硬くなります
  • 机と体の間にこぶし一つ分の隙間を空ける
  • 両足を床にしっかりつける:安定した姿勢が安定した線を生みます

姿勢が整ったら、いよいよ筆の持ち方です。

二つの基本的な持ち方

書道には大きく分けて二つの筆の持ち方があります。**単鉤法(たんこうほう)双鉤法(そうこうほう)**です。

単鉤法(たんこうほう)

単鉤法は、人差し指を筆の前面に当て、親指と二本の指で筆を支える持ち方です。

持ち方の手順:

  1. 筆の軸を親指と人差し指でつまむように持つ
  2. 人差し指は筆の前面(自分に向かって手前側)に自然にかける
  3. 中指は筆の後ろ側から軽く支える
  4. 薬指と小指は中指に沿えるように自然に曲げる
  5. 筆は床に対して垂直に保つ

単鉤法は比較的ペンの持ち方に近いため、初心者が最初に覚えやすい持ち方です。小筆で細字を書くとき、手紙やはがきを書くときに適しています。

双鉤法(そうこうほう)

双鉤法は、人差し指と中指の二本を筆の前面にかける持ち方です。

持ち方の手順:

  1. 親指の腹で筆の左側を支える
  2. 人差し指と中指を筆の前面にかける(「鉤」が二つあるので「双鉤」)
  3. 薬指の爪側を筆の後ろに当てて押し返すように支える
  4. 小指は薬指に添える
  5. 手のひらの中に卵一つ分の空間を保つ

双鉤法は筆をしっかりホールドできるため、大筆で力強い線を書くときに向いています。楷書や大きな作品を書く際には、この持ち方が基本になります。

MUKYOのおすすめ: 私は普段、双鉤法をベースにしています。大きな作品を書くことが多いのと、双鉤法の方が筆の動きを自在にコントロールできるからです。ただし、細字の作品や繊細な表現が必要なときは単鉤法に切り替えることもあります。最終的には両方できるようになるのが理想です。

五指執筆法——古典的な教え

中国の書道理論では、筆の持ち方を「五指執筆法(ごししっぴつほう)」として体系化しています。五本の指それぞれに役割があるという考え方です。

  1. 擫(おう):親指で筆を押さえる
  2. 押(おう):人差し指で筆を押す
  3. 鉤(こう):中指で筆を引っかける
  4. 格(かく):薬指で筆を支え返す
  5. 抵(てい):小指で薬指を助ける

五本の指がそれぞれの役割を果たしつつ、力のバランスが均等であることが大切です。どこか一箇所に力が偏ると、筆の動きが不自然になり、美しい線は書けません。

筆を持つ位置——高さで変わる線の表情

筆のどの位置を持つかによっても、線の性質が大きく変わります。

低い位置(筆の穂に近い位置)

  • 線のコントロールがしやすい
  • 細かい文字や精密な表現に向く
  • 楷書や小筆の作品に適している

高い位置(筆の軸の上方)

  • 筆の動きが大きくなり、ダイナミックな線が書ける
  • 行書や草書など、流れるような書体に向く
  • 大きな作品や表現的な書に適している

私MUKYOがパフォーマンス書道で大きな作品を書くときは、筆の軸のかなり高い位置を持ちます。そうすることで腕全体の動きが筆先に伝わり、迫力のある線が生まれるんです。

よくある間違いと直し方

間違い①:指に力を入れすぎる

最も多い間違いです。筆を握りしめてしまうと、線が硬く、ぎこちなくなります。

直し方: 筆を持ったとき、手のひらの中に空間(卵を包むイメージ)があるか確認してください。筆を軽く回転させられるくらいの余裕が必要です。

間違い②:筆が傾いている

筆が左右に傾いていると、線の太さが均一にならず、筆先が割れやすくなります。

直し方: 基本は筆を垂直に保つこと。鏡を横に置いて確認するのも効果的です。意図的に筆を傾けるのはテクニックとしてありますが、まずは垂直が基本です。

間違い③:腕が机にべったりついている

腕全体を机に預けてしまうと、筆の動きが手首だけに制限されてしまいます。

直し方: 大筆で書くときは提腕法(ていわんほう)——肘を机から離して宙に浮かせる——を意識しましょう。最初は疲れますが、慣れると筆の自由度が格段に上がります。

間違い④:小指が浮いている

小指が筆から離れて浮いてしまう方がいます。一見些細に見えますが、五本の指のバランスが崩れる原因になります。

直し方: 小指は薬指に自然に添えること。意識しすぎず、リラックスした状態を保ちましょう。

練習方法——正しい持ち方を体に覚えさせる

正しい持ち方は、頭で理解するだけでなく体に覚えさせる必要があります。

ステップ1:空中で書く

筆を正しく持った状態で、空中に大きく文字を書いてみましょう。墨も紙も使わなくてOK。持ち方と腕の動きの関係を体感することが目的です。

ステップ2:横線・縦線の反復

紙に向かって、まず横線(一)を何本も引きます。次に縦線(丨)。この単純な動作の中で、持ち方を意識し続けてください。

ステップ3:円を描く

筆を持ったまま、大きな円を何度も描きます。滑らかに円が描けるようになったら、持ち方が安定してきた証拠です。

ステップ4:基本の「永字八法」

「永」という漢字には書道の基本的な8種類の筆法がすべて含まれています。永を繰り返し書くことで、さまざまな方向への筆運びを持ち方とセットで習得できます。

MUKYOからのメッセージ

筆の持ち方は、書道における「呼吸」のようなものだと私は思っています。呼吸が乱れていると体が動かないように、持ち方が不安定だと書も不安定になる。

最初は窮屈に感じるかもしれません。「こんなに細かいことを気にしなきゃいけないの?」と思うかもしれません。でも、正しい持ち方が自然にできるようになったとき、筆があなたの体の一部になる感覚を味わえるはずです。

その瞬間、書道はもっと楽しくなります。

焦らず、一本一本の線を大切に。あなたの書道の旅を、心から応援しています。

執筆・監修

夢香 MUKYO

東京を拠点に活動する書道家。伝統的な書道から現代アートまで幅広く手がけ、TikTokで66K+のフォロワーに書道の魅力を発信中。